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泌尿器科

血尿について

「おしっこに血が混じっている!!」
このような主訴で来院されるケースがあります。
また
「以前血尿をした事があるんですが、様子を見ていたら治っちゃいました。」
と言われているのも聞いた事があります。
「血尿=膀胱炎」と思われる方が多いようですが、実際には様々な原因があります。

尿が赤い場合には、大きく分けて次の3つが考えられます。

赤血球尿(出血による血尿)

尿に血液が見られる場合には、尿路系(腎臓、尿管、膀胱、尿道)や雄の前立腺などから出血が考えられます。また雌では子宮や膣から出血してる場合にも外陰部からの出血が見られます。

- 考えられる原因 -

腎結石、腎盂腎炎、尿管結石、膀胱炎、膀胱結石、尿道炎、尿道結石、腫瘍、外傷、前立腺炎、前立腺腫瘍、凝固障害(血小板減少症、播種性血管内凝固症候群)など

血色素尿(ヘモグロビン尿)

体内で短時間に大量の赤血球が破壊される事により、肝臓や脾臓での処理が間に合わず、赤い色素が尿中に排泄される事が原因です。

- 考えられる原因 -

免疫介在性溶血性貧血、バベシア症、ヘモプラズマ症、フィラリア症、タマネギ中毒、薬物や毒物など

ミオグロビン尿

筋肉の細胞が破壊(融解、壊死)される事で、筋肉内に含まれるミオグロビンと言われる蛋白が血中から尿中に排泄される事が原因です。

- 考えられる原因 -

急性筋炎、過剰の運動、長時間の発作など

最もよくみられるのは腎臓・膀胱疾患による「赤血球尿」です。

細菌感染であればお薬での治療になりますが、結石や腫瘍であれば療法食、外科手術、抗がん剤などが必要になります。
またこれらの病気を鑑別するためには、尿検査だけでなくレントゲン検査や超音波検査などが必要になる事もあります。
しかし、血尿も様子を見ていると肉眼では分からないくらいに出血量が減る事があり、見た目ではあたかも治ってしまったように感じる事もあります。
また膀胱炎でよく見られる頻尿(何度も少量の尿をする)も必ず見られるわけではありません。

様子を見ている間に膀胱から腎臓への感染拡大・結石の拡大や尿道の閉塞・腫瘍の拡大や転移など、結果的に大切な犬や猫たちを苦しめてしまう事になりかねません。
血尿や頻尿が見られる場合には必ず早期に動物病院にご相談下さい。

慢性腎臓病(慢性腎不全)と血液検査

近年のワンちゃん、ネコちゃんの死亡原因の割合が高い病気として、ガンや心臓病に並び「腎臓病」があげられます。

腎臓の異常を調べる検査として、動物病院ではよく血液検査(BUN:血中尿素窒素、Cre:クレアチニン)や尿検査が実施されています。
お家のワンちゃん、ネコちゃんでも検査された事がある子はたくさんいると思います。

血液検査でよく誤解される事なのですが、
「BUNやCreが少し上昇している=腎臓の機能が少し落ちている」
と思われてしまう事です。
実際にはその逆で、
「BUN、Creの軽度の上昇=腎機能がかなり落ちている」事になります。

IRIS(the International Renal Interest Society - 国際獣医腎臓病研究グループ)による分類表

Cre(mg/dl) 犬 Cre(mg/dl) 猫 BUN 残っている腎機能
ステージ1 1.4以下 1.6以下 異常なし 100~33%
ステージ2 1.4~2.0 1.6~2.8 軽度上昇 33~25%
ステージ3 2.1~5.0 2.9~5.0 中等度上昇 25~10%
ステージ4 5.0以上 5.0以上 重度上昇 10%以下

ステージ1→4になるにつれて重度、いわゆる末期に近づくという事です。

BUN、Creともに軽度上昇しているだけでも、すでにステージ2の段階にあり腎機能は残り33~25%ということになります。(67~75%の腎臓がすでに働かなくなっているという事です)

しかし、厄介な事にステージ2~3になるまではほぼ何の症状も示しません。元気もあり、食欲もあります。
しかし中には飲水量や尿量が増加することに気付かれることで、比較的早期に発見出来ることもあります。
その他にもGFR(糸球体濾過量)、尿中微量アルブミンなど、さらに精度の高い検査もあります。

人も同様ですが、腎臓は一度ダメージを受けて壊れてしまうと、移植以外には回復する事はありません。
お食餌・お薬・点滴などを駆使して、残っている腎臓をどれだけ長く保持させてあげれるか。
これが1番の治療目標になります。

腎臓病は死亡原因の多数を占めるようになって来ています。
7歳を過ぎシニア期に入ったワンちゃん、ネコちゃんは1年に1~2回の健康診断を受けさせてあげましょう。
自宅でも尿の量や回数、尿の色、飲水量などをこまめにチェックしてあげて下さい。

ネコの下部尿路疾患

涼しい季節になると、動物達の飲水量は減少し、それに伴って排尿回数や尿量も少なくなります。
そこで問題となるのが、特にネコに多い下部尿路疾患です。
(下部尿路疾患とは膀胱から尿道でおこる病気です。)

下部尿路疾患になると
何度もトイレに行くが尿が出ない
排尿痛
血尿
などの症状がみられます。
ひどい場合には、これらが原因でできた結晶、結石、炎症生産物(膀胱粘膜が剥がれたもの)などが尿道に詰まり、尿が出なくなる事があります。
これは「尿閉」といって、すぐに閉塞を解除し尿を出してあげなければ命に関わる、とても危険な状態です。

飲水量や排尿回数の減少原因

飲水量や排尿回数の減少は、寒さだけが原因ではありません。
運動不足
肥満
多頭飼いによるトイレ数の不足
トイレが汚れている
食餌(人の食べ物、下部尿路疾患に配慮されていない食餌など)も要因としてあげられます。

下部尿路疾患を防ぐために

  • よく遊んであげる
  • 正しいお食事の選択
  • トイレの数はネコちゃんの数+1つ
  • 最低でも1日1回はトイレの掃除をしてあげる
  • 水を飲める場所を複数用意する

運動・正しい食生活・ダイエット、人間でも健康のためには大切な事です。
ネコちゃんと一緒に健康維持を心掛けましょう!

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